SuggescoMagazine 第 86 号 P.01
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決断疲れは、減らすより渡すほうが早かった。作業だけ渡すと戻ってくる、判断ごと渡す4ステップ

決断疲れの対策として並ぶのは、服を固定する・朝のうちに決めるなど、自分ひとりで完結する工夫ばかり…

本記事はアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト)を含みます。実際に読んだ本だけを紹介しています。

着る服を先に決めておく。大事な判断は午前中に回す。決断疲れを減らす工夫として、よく紹介されているやり方です。どれも、自分が起こす決断を減らすための工夫でした。ただ、疲れの原因は決断の数そのものではなく、決断が自分のところにばかり集まってくることのほうなんじゃないか。最近、そう思うようになりました。集まってくるのは、「これ、どうしますか」と人から飛んでくる判断です。服を先に決めておいても、そちらの量は変わりません。

目次

決断疲れの正体は、決断の数ではなく「自分に集まってくる仕組み」だった

決断疲れというのは、判断を重ねるうちに判断そのものの質が落ちていく状態のことです。夕方の自分は、朝の自分と同じ精度では決められません。ここまでは、たいていの記事に書いてあります。

引っかかったのは、その先でした。並んでいる対策が、どれも自分ひとりで完結するものばかりだったんです。服を固定する、持ち物を減らす、朝のうちに決めておく。全部、自分が起こす決断を減らす話です。ところが、自分の側の決断をどれだけ削っても、人から振られる判断はそのまま残ります。服を固定しても、朝のうちに決めておいても、「これどうしますか」が飛んでくる限り、決断は1つも減りません

「その判断を他人に渡す」という選択肢は、ほとんど見かけませんでした。減らせるのは自分の生活の中だけ、というのが前提になっています。決断の総数は自分の努力の量で決まるのではなく、判断が自分のところに集まってくる仕組みのほうで決まっているのだと思います。

AIを使い始めてから、飛んでくる量はむしろ増えました。手を動かす作業は減ったのに、「これでいいですか」と確認される回数が増えたからです。抱える量が増えるほど質が落ちるのは人もAIも同じで、そのあたりは抱えすぎると、人もAIも質が落ちる。──エッセンシャル思考を、AIから学び直した話に書きました。関心があれば、読んでみてください。

作業だけ渡すと戻ってくる。判断ごと渡すと戻ってこない

仕事を任せるとき、渡しやすいのは作業のほうです。資料を作ってもらう、下調べをしてもらう、数字を集めてもらう。手が空くので、渡せた気になります。ところが少し経つと、たいてい戻ってきます。

「これどうしますか」と聞かれた時点で、注意力はもう取られている

戻ってくるときの言葉は、だいたい決まっています。「これ、どうしますか」です。渡したのは手を動かす部分だけで、決める部分は自分に残っていました。だから返ってくるわけです。

やっかいなのは、聞かれた瞬間にもう消耗が始まっていることです。答えるまで数秒しかかからなくても、その数秒で前提を思い出して、選択肢を並べて、どこに影響が出るかを見積もっています。作業を渡して浮いたはずの時間は、確認の往復で少しずつ消えていきます。

戻ってくる渡し方と、戻ってこない渡し方

両者の違いは、渡した中身に判断が入っているかどうかだけです。「この資料を作っておいてください」は作業の依頼で、最後に決めるのは自分のままです。「この件は任せます。方向性はそちらで決めて、固まったら教えてください」は判断ごとの依頼で、決める人が入れ替わります。作業だけ渡すと判断が自分に残るので、結局戻ってきます。戻ってこないのは、判断ごと渡したものだけです

渡す相手が人でもAIでも、起きることは同じです。途中で確認を挟む渡し方をしている限り、僕の一日から決断は減りません。

渡すかどうかの基準は「多少問題になっても大丈夫か」

とはいえ、なんでも判断ごと渡していいわけではありません。判断を手放した以上、思っていたのと違う結果が出てくることはあります。

渡していいもの/自分で持つもの

使っている基準は1つだけです。多少問題になっても大丈夫かどうか。大丈夫なら渡します。取り返しがつかないもの——お金が動く、人の評価に関わる、外に出したら引っ込められない——は自分で持ちます。それ以外は、渡してしまいます。

基準を1つに絞ったのは、渡すかどうかで毎回悩むこと自体が決断だからです。「今回は渡すべきだろうか」と考え始めた時点で、決断疲れの対策になっていません。渡すか自分で持つかは、その場で考えるより、先に決めておくほうが楽でした。

すべての火種を消しに行かない

考え方のもとは、ティモシー・フェリスの『「週4時間」だけ働く。』にありました。起きるかもしれない問題を全部先回りして消しに行くのをやめる、という話です。あえて反応しない、あえて放っておく。浮いた注意力を、本当に考えたいことに残しておく。全部に丁寧に対応するのは、一見よさそうに見えて、自分のいちばん大事な時間を差し出しているだけだったりします。本の中身については「週4時間だけ働く」は本当に可能か。働きたくない気持ちの正体と、空いた時間の使い方で詳しく書いています。気になった方は、そちらも開いてみてください。

「週4時間」だけ働く。 ティモシー・フェリス

PR — 「全部やらない」の根拠をくれた一冊「週4時間」だけ働く。(ティモシー・フェリス)やらない仕事を決めて、繰り返す作業を人や仕組みに渡していく手順が並びます。多少の問題は許容する、という考え方を取り入れるきっかけになりました。Amazonで見る

決断疲れの対策|渡すための4つのステップ

渡せるようにするまでの順番を並べておきます。上から1つずつで大丈夫です。

STEP1 判断が自分に戻ってくる依頼を見つける

まず、いま抱えている仕事のうち「最後に決めているのが自分」のものを書き出します。渡したつもりで、確認だけ自分に残っているもの。承認、方向性の相談、細かい言い回しの可否。数えると、思ったより多いでしょう。

見つけ方は単純で、一週間のあいだに「どうしますか」と聞かれた回数を数えるだけです。内容もあわせて書いておくと、同じ種類の質問が繰り返し来ていないかが分かります。繰り返している種類があれば、そこが最初に手を入れる場所です。

STEP2 「どうしますか?」を「これでいきますか?」に変えてもらう

渡し方を変えられない相手もいます。役割の関係で、最後の判断がどうしても自分に来る場合です。それでも、聞かれ方のほうは変えてもらえます。

お願いしているのは1つで、イエスかノーで答えられる形まで持ってきてもらうことです。「どうしますか?」ではなく「これでいきますか?」に変えてもらうだけで、頭の疲れ方がまったく違います。前者は選択肢を作るところから自分の仕事になりますが、後者は用意された案に首を縦に振るかどうかだけで済みます。

相手にとっても、そのほうが早いことが多いようです。案を出すところまでやってもらえれば、こちらは数秒で返せます。往復の回数も一緒に減ります。

STEP3 リスクのないものは、自分を通さずに回す

書き出したもののうち、多少問題になっても大丈夫なものは、自分を経由させずに回します。頼める人がいるなら人へ、いないならAIへ。

AIに任せているのは、一次対応が要らないもの、多少ぶれても致命傷にならないものです。終わったTODOにチェックをつけるような細かい作業も、まとめて渡してしまいます。見るのは完成の直前だけにしています。気をつけているのは、AIを主役にしないことです。判断を全部預けるための相手ではなく、自分を通さなくていいものを引き受けてもらう脇役として置いています。役割ごとに分けて頼むやり方はAIエージェントの作り方は「分業」だった。個人が賢い1体に頼るのをやめて、チームで組む方法にまとめました。役割で分けるところまで知りたい方は、あわせてどうぞ。

STEP4 多少の問題は許容すると、先に決めておく

最後は、気持ちのほうの話です。渡すと決めても、渡したあとに気になって様子を見に行ってしまえば、結局そこで判断しています。

だから、渡す前に「多少の問題は許容する」と決めておきます。先に言葉にしておくと、見に行かない理由ができます。

言葉にしないまま渡すと、渡したものが確認待ちのまま溜まって、そのぶん頭が空きません。起きたら直せばいい、という前提で渡す。そこまで決めて、はじめて手から離れます。

それでも渡せないときは、断るより先に「入口」を見る

渡す相手がいない、渡せる中身でもない。そういう依頼は当然あります。ただ「断る」に進む前に、その依頼が自分のところへ届く手前——入口のほうを見るようにしています。

断ること自体が悪いわけではありません。ただ、断るのは相手との関係にコストがかかります。理由を用意して、代案を添えて、そのあとの空気も少し気にする。断るのは関係にコストがかかりますが、渡すのはかかりません。同じ「自分ではやらない」でも、後味がだいぶ違います。

入口のところでできるのは、そもそも頼みづらい状態を作っておくことです。予定を先に埋めておくくらいのことですが、断る場面自体が減ります。

それでも断らないといけない場面のほうは、断れない人は性格を直さなくていい|「境界線」の引き方と、断り方の型4つにまとめています。断り方の型を先に持っておきたい方は、そちらをご覧ください。

いまだに崩れるのは、会話の場面です

正直に書くと、僕も全部はできていません。

いちばん崩れるのは、人と話している最中です。ミーティングの途中で、本当は相手にお願いすればいい作業まで「あ、それやっておきます」と引き受けてしまう。優しさというか、その場の空気をよくしたい気持ちが勝ってしまうんですよね。終わったあとにタスクだけが増えていて、あれ、と思うことがよくあります。

文字のやりとりなら一拍おけるのに、会話は反射で答えてしまいます。持ったボールの数だけ、頭のどこかが使われ続けます。なので、これからは気づいてもあえて引き受けない、という練習をしようと思っています。ボールを持ちすぎない。ここはまだ、できるようになった話ではありません。

よくある質問

Q. 決断疲れは、なぜ起こるのですか?
A. 一日に決められる量には上限があって、判断を重ねるほど後半の精度が落ちていくからだと言われています。ただ、原因を自分の中だけに探すと行き詰まります。判断がどこから飛んできているかを一度並べてみると、打つ手が見えやすくなるでしょう。

Q. 決断疲れをなくす方法はありますか?
A. なくすのは難しいと思っています。減らすなら、自分が決める回数そのものを減らすほうが早いです。判断ごと人やAIに渡す、イエスかノーで答えられる形にしてもらう。僕の場合は、その2つでだいぶ変わりました。

Q. 決断疲れには、どんな症状が出ますか?
A. よく挙がるのは、決めるのを先延ばしにする、どちらでもいい選択で長く迷う、逆に投げやりに決めてしまう、といったものです。体が疲れるというより、決めること自体が億劫になる状態だと言われています。判断を重ねた後半ほど出やすいそうなので、大事な判断が一日の後ろに寄っていないかを一度見てみるといいでしょう。

Q. 決断疲れからの回復方法は?
A. 休むと戻ってきます。ただ、回復を早める方法を探すより、戻ってきた分を何に使うかを先に決めておくほうが現実的でしょう。人から飛んでくる判断でそこが埋まってしまうと、休んだぶんが同じところに流れていきます。強い不調が続くようなら、工夫でどうにかしようとせず、医療機関に相談してほしいと思います。

まとめ|決めなくていいことを、決めないでいられるように

決断疲れの対策として並んでいるものは、どれも自分の生活を整える話でした。悪くはないのですが、僕の一日を重くしていたのは、そこではありませんでした。人から飛んでくる「これ、どうしますか」のほうです。

作業だけ渡すと戻ってきます。判断ごと渡すと戻ってきません。渡すかどうかは、多少問題になっても大丈夫かで決めています。渡せないものは、断る前に入口のほうを見ます。やっていることは、それだけです。

空いたぶんを何に使うかは、また別の問題として残ります。僕なりの考えは生きがいとは何か。仕事をAIに渡して分かった、働く世代のための見つけ方に書きました。今週「これ、どうしますか」と聞かれたら、その場で答える前に一度だけ、この判断はそもそも自分のところに来る必要があったのかを考えてみてください。ノーだったものから、渡していけます。

Ryuichi
Writer / 運営者 Ryuichi

金沢を拠点に、AI活用とこれからの暮らし方を実際に試して記録しています。

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