AIエージェントの作り方は「分業」だった。個人が賢い1体に頼るのをやめて、チームで組む方法
「AIエージェントの作り方」を実装で調べても、一人で使うと質が落ちて詰まります。原因はコンテキス…

「AIエージェントの作り方」を調べると、フレームワークの比較やコードの実装例ばかりが並びます。ところが、一人ぶんの仕事を実際に回そうとすると、いちばん詰まった壁は実装ではありませんでした。賢いAIに丸ごと任せたはずなのに、なぜか出力の質がじわじわ落ちていく。原因は、AIが抱える情報でコンテキストが埋まっていくことにありました。私がたどり着いたのは、1体を鍛え上げるより、役割ごとに割った複数のAIでチームを組むやり方です。個人から小規模の事業主が真似できるAIエージェントの作り方を、実装ではなく「分業」という角度からまとめます。
なぜ「1つの賢いAIに全部やらせる」は頭打ちするのか
Claude Codeのようなツールでエージェントを組みはじめた頃、私は欲張って1体に全部を任せていました。リサーチも執筆も校正も、請求書の下書きまで、同じセッションに順番に頼んでいく。最初はよく動きます。ところが会話が長くなるほど、抜け漏れが増え、文章のトーンがぶれ、指示したはずのルールを平気で無視するようになりました。
正体は、コンテキストウィンドウ(AIが一度に扱える情報量)が埋まっていくことです。前のタスクの文脈を引きずったまま次の作業に入るので、頭の中がとっ散らかった状態で判断している。会計の数字を追っていた流れのままSEO記事を書かせると、"会計の頭"のまま書きはじめて、どこかぎこちない原稿が出てきます。抱えすぎると出力が濁るのは、人もAIも同じでした。人間だって、マルチタスクで頭がいっぱいになれば判断が鈍ります。容量を超えて詰め込むほど、キレは落ちる。
同じ現象を、AIのコンテキストウィンドウと人間の認知の容量を重ねて掘り下げた記事も書いています。抱えすぎると質が落ちるのは人もAIも同じ、という話も、興味があればあわせてご覧ください。
解決は「増やす」ではなく「割る」
質が落ちたとき、多くの人はより賢いモデルを探したり、プロンプトを長く盛ったりします。私も一度は同じ道を通りましたが、盛るほど余計に濁りました。楽になったのは逆で、抱えている仕事を減らす方向、つまり役割ごとに割った瞬間からです。
万能な1体にすべてを背負わせるのをやめて、専門特化した複数のエージェントに仕事を分ける。リサーチ係、執筆係、校正係、というふうに1体につき1つの役割だけを持たせます。各エージェントが向き合う情報が絞られるので、コンテキストが軽いまま保て、判断がぶれません。人間の会社で経理担当と広告担当を分けるのと、まったく同じ発想です。
役割を割ってみて、AIエージェントの作り方に対する見方が私の中で変わりました。作り方の本質は、賢い1体をどう構築するかではなく、仕事をどう割り、誰に何を任せるかという分業の組み方にある。マルチエージェントというと難しく聞こえますが、やっていることは役割分担です。技術というより、チームの作り方に近い話でした。
AIエージェントの作り方を支える、個人向けの6原則
一人でAIのチームを回すために、私が守っている原則を6つにまとめます。どれも特別なツールは要らず、考え方と、いくつかのファイルがあれば真似できます。
1|1体につき1つの役割にする(専門特化)
万能な1体を目指さない。リサーチ・執筆・校正・入稿と、工程ごとにエージェントを分けます。会計をやっていた頭のまま記事を書かせると精度が落ちる、というのが出発点です。役割を絞ると各エージェントのコンテキストが軽く保て、そのぶん1つひとつの仕事の質が安定します。
2|作る係とチェックする係を分ける(レビュー文化)
書いた本人に自分の原稿をレビューさせても、粗はなかなか見つかりません。人間でも同じで、自分の文章の誤字は読み飛ばしてしまう。だから執筆エージェントが出した原稿は、別の校正エージェントに通します。品質は一つの賢い頭ではなく、複数の目で担保する。作り手と検品役を分けるだけで、事故が目に見えて減りました。
3|会話ではなく、ファイルで引き継ぐ
エージェント同士を長い会話でつなぐと、前の文脈が次のエージェントに流れ込んで、せっかく軽く保っていたコンテキストが汚れます。私は成果物のファイルでバトンを渡すようにしています。リサーチ係は構成案をファイルに書き出し、執筆係はそれを読んで原稿ファイルを作り、校正係はチェックリストを残す。会話ではなく、非同期のドキュメントで引き継ぐ。人間のチームが議事録や仕様書で連携するのと同じで、記録を挟むほど受け渡しがきれいになります。
4|任せる範囲を一枚の「委任状」に書く(CLAUDE.md)
Claude Codeでは、CLAUDE.mdというファイルにAIへの指示を書けます。私はここをコーディング規約ではなく、「何を任せ、どこからは人が確認するか」を線引きする委任状として使っています。書き方には、失敗しながら身についたコツがあります。
まず、「やるな」を並べるより「止まれ」を書く。禁止事項ばかり積むとAIが萎縮して、当たり障りのない仕事しかしなくなります。次に、曖昧な委任ではなく閾値を書く。「小さな判断は自分で進めてよい、大きな変更は必ず人に確認する」といった具合に、境目を数字や条件で示す。そして、同じ指示を二回したらファイルに書き、三回目が来る前にスキルとして仕組み化する。最後に、失敗したルールはその日のうちに書き足す。一度やらかしたことを言葉にして残せば、事故が資産に変わります。
5|判明した原則をメモリ層に貯める
好み、うまくいったやり方、やらかした失敗。作業のなかで見えてきた原則を、1つのファイルに1つの事実、という粒度で貯めていきます。次のセッションでエージェントが同じ資料を読めば、前と同じ品質で動き出せる。人が引き継ぎノートを残しておくのと変わりません。ばらばらに散らさず、一箇所に積み上げるのがコツです。
6|入口を一つに絞る(ディスパッチャ)
専門エージェントが増えると、今度は「どれに頼めばいいか」で迷います。私は「〇〇やって」の入口を一つのルーターにまとめ、依頼の内容に応じて担当のエージェントへ振り分ける形にしました。窓口が一本化されると、使う側は中の分業を意識せずに済みます。会社でいえば受付や司令塔にあたる役回りです。
実際の組み方——記事・受託・バックオフィスの分業例
私が回している業務は、大きく三つに分かれます。一つめは自分のメディア運営、つまり記事の制作。二つめは受託のWeb・SEO制作の支援。三つめは請求や会計といったバックオフィスです。三つを同じ頭で混ぜると濁るので、フォルダから分けています。
workspace/ の直下に、全体の委任状になる CLAUDE.md を置き、原則を貯める memory/ を用意します。自分のメディアは media/(配下の skills/ にリサーチ・執筆・校正の各係)。受託は clients/ の下に案件ごとのフォルダを作り、たとえば架空の美容クリニック green-clinic/ や架空のスクール blue-school/ に、それぞれ案件専用の CLAUDE.md(この会社では何を任せ、何を確認するか)を置きます。請求や会計は backoffice/ にまとめる。そして入口はひとつのルーターにして、依頼の内容に応じて各フォルダの担当へ振り分けます。
言葉だけだと掴みにくいので、頭の中の構成をそのまま図にすると、だいたいこんな形です。フォルダ名も案件名も、すべて架空のものに置き換えています。真似するときの下敷きにしてみてください。
workspace/
├─ CLAUDE.md # 全体の委任状:方針・任せる範囲・「止まれ」の線引き
├─ memory/ # 判明した原則を1ファイル1事実で蓄積
│ ├─ tone.md # 文体・トーンの決めごと
│ └─ ng-list.md # やってはいけないことリスト
├─ media/ # ① 自分のメディア運営
│ ├─ CLAUDE.md
│ └─ skills/
│ ├─ orchestrator # 司令塔:全体を仕切って各係へ振り分ける
│ ├─ researcher # リサーチ係:構成案をつくる
│ ├─ writer # 執筆係:原稿を書く
│ └─ qa-editor # 校正係:別の目で検品する
├─ clients/ # ② 受託(案件ごとに独立・文脈を混ぜない)
│ ├─ green-clinic/ # 架空の案件A
│ │ └─ CLAUDE.md # この案件のトーン・触ってよい範囲
│ └─ blue-school/ # 架空の案件B
│ └─ CLAUDE.md
└─ backoffice/ # ③ 請求・会計
└─ skills/
└─ invoice # 請求書の下書き係(送信前は必ず人が承認)
ポイントは、階層そのものが「役割分担」になっていることです。CLAUDE.md を各フォルダに置くと、その場所ごとに委任範囲を分けられる。全体の方針は一番上の CLAUDE.md に、案件ごとの細かい約束は各 clients/ の中に、と書き分けるだけで、片方の文脈がもう片方に混ざらなくなります。
いちばんイメージしやすいのは、記事を1本つくる流れです。まず私が企画のテーマと狙いを決める。次にリサーチ係が上位記事や検索の傾向を調べて、構成案のファイルにまとめる。執筆係はその構成案だけを読み、原稿を書いてファイルに保存する。校正係は原稿を受け取り、読みにくい箇所や事実の怪しい箇所をチェックリストに書き出す。最後に司令塔が全部をまとめて入稿の形に整える。一人で全工程を抱えていた頃と比べて、各エージェントが浅く速く動くので、仕上がりが安定しました。
受託でも作りは同じです。green-clinicとblue-schoolという毛色の違う二案件を並行しても、案件ごとのCLAUDE.mdに「この会社のトーン」「触ってよい範囲」を分けて書いておけば、片方の文脈がもう片方に混ざりません。バックオフィスも独立させ、請求書の下書きや経費の仕分けだけを担当させています。
でも、全部は任せない
さんざん分業を勧めておいて矛盾するようですが、私はすべてをAIに渡してはいません。最終判断、一次情報の裏取り、そして仕上がりの品質チェックは、人の側に残します。エージェントが下書きした請求書も、送信する前に必ず私が目を通す。お金が動く操作や外に出す判断は、AIが勝手に実行できない仕組みにしておく。読み取りと下書きまでを自動にして、実行の一歩手前で人の承認を挟む、という線引きです。
道具そのものは、むしろ絞っています。私が使うアプリを4つまで減らした話とも根っこは同じで、AIツールを結局4つに絞った話に詳しく書いています。よければあわせて読んでみてください。道具は絞り、役割は割る。多いほうがいいのはエージェントの数ではなく、仕事の分けかたの細かさのほうでした。
作業者から、設計者・レビュアーへ
AIのチームを組めるようになって、自分の立ち位置が静かに変わりました。手を動かして一本ずつ記事を書く作業者から、誰に何を任せるかを決め、上がってきたものをチェックする側へ。個人がやる仕事の中身が、作業から設計とレビューに移っていく。AIが実務を担っていくこれからの時代に、人の役割がどこへ動くのかを、私は自分の手元で実感しています。
ただ、どこまでを任せてどこを自分で握るかは、扱う業務によってかなり変わります。業種の違う受託と、自分のメディア運営とでは、確認すべき勘どころがまるで違う。正解を一律に配れる話ではありません。
あなたの業務に合わせて、AIエージェントのチームをどう組み、どこまで任せてどこを人が握るか。仕組み化の相談や、伴走しながら一緒に組み立てる支援をしています。合いそうだと思われたら、お問い合わせはこちらから気軽にご連絡ください。無理に売り込むことはしないので、まず話を聞くだけでも大丈夫です。
賢い1体をどこまでも鍛えるより、役割で割ってチームにする。割り方さえ掴めれば、個人でも、抱えすぎずに質を落とさない働き方に近づけます。まずは今の仕事を工程で分けて、一つのエージェントに一つの役割から始めてみてください。


