SuggescoMagazine 第 90 号 P.01
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情報遮断は「断つ」より「見えなくする」。机とデスクトップを空にして、通知は時間で区切る

時間は残っているのに頭が残っていない。原因を書き出したら、机の本とデスクトップとChromeのタ…

時間はまだ残っているのに、頭が残っていない。しばらく、そういう日が続いていました。忙しいせいだと思っていたのですが、一日ぶんの注意力がどこへ行ったのかを書き出してみたら、持っていっていたのは仕事の量ではありませんでした。机に置きっぱなしの本と、ファイルだらけのデスクトップと、開いたままのChromeのタブです。情報遮断というと、ニュースやSNSを断つ話に聞こえます。僕の場合に変わったのは、読む情報を断ったときではなく、目に入るものを先に減らしたときでした。

この記事の動画版

AIを使った開発者16人、体感は20%速い。実測は19%遅かった(9分19秒)AIで作業が減ったあと何に頭を持っていかれていたのかを、開発者16人の実測やMicrosoft×CMUの調査を引きながら、机とデスクトップを空にするところまで記事と同じ流れで話しています。

目次

情報を遮断するのは、我慢することではなかった

情報を遮断すると言うと、意志の力で見ないようにする話に聞こえます。僕がやっているのは逆で、見ないよう頑張るのをやめて、そもそも視界に入ってこない状態を先に作ります。入ってきてから対処するより、入口で絞ってしまうほうが、頭の使い方としてずいぶん楽でした。我慢の総量が増えるわけでもなく、我慢する場面そのものが消えます。

先に範囲を決めておきます。スマホそのものを減らす話は別に書いたので、ここでは机とパソコンの画面、つまり仕事中に目に入るものだけを扱います。通知も同じで、SNSやアプリのお知らせは切ってしまい、この記事で書くのは、切らずに残した仕事のチャットをどう扱っているかのほうです。切る側のやり方は別の記事にまとめてあります。

人から飛んでくる依頼や判断をどう減らすかは、決断疲れは、減らすより渡すほうが早かったに分けて書きました。

奪われていたのは時間ではなく、目に入った回数だった

自分の注意力が一日でどこへ行ったのかを、実際に書き出してみたことがあります。数えてみると、けっこうな数がありました。

僕の注意力を持っていったもの

・机の上に置いてある本/・デスクトップに散らばったファイル/・開きっぱなしのChromeのタブ/・「後で」に置いたままのタスク/・調査という名目で開くSNS/・こちらの都合と無関係に鳴る電話

机の上の本は、ふと目に入るとそのままパラパラめくってしまいます。読書自体はいいことのはずなのに、集中したかった時間だけがなくなります。デスクトップも似ていて、画面を出すたびに関係ないファイル名が目に入り、「整理しないとな」が一瞬よぎってから、また作業に戻ります。往復するたびに、じわじわ削られていきます。タブは開いているだけで気になります。とくに数字まわりの管理シートは、今日そこを見たところで打ち手が変わるわけでもないのに、つい見に行ってしまう。着手していないタスクにいたっては、手をつけていないのに頭のリソースだけ持っていかれている状態でした。

書き出して分かったのは、時間が足りないのではなく、時間は残っているのに頭が残っていないという状態だったことです。

僕は普段、マーケティングの仕事をしています。身も蓋もなく言えば、人の注意力をどうやってこちらに向けさせるかを考える仕事です。スクロールする指を止めてもらうために冒頭の1秒を練るし、クリックしてもらうために言葉を選びます。奪う側にいるからこそ思うのですが、奪う技術はどんどん洗練されていて、無防備でいたら削られる一方だなと。

スマホを見る時間そのものを減らした記録はデジタルデトックスをやってみた|スマホを1日1時間に減らす4つの実践にまとめています。時間の側から減らす話なので、今日書いているのとは入口が違います。

目に入るものを、物理的に減らす

実際にやっていることを並べます。手っ取り早くて、変化も分かりやすかったのが物理側の引き算でした。

机の周りから本をなくす

本棚は部屋の中にありますが、机の周りには置いていません。目に入るところから外しただけで、作業中にパラパラめくることがなくなりました。読みたくなったら取りに行けばいい話だったんです。我慢して読まないようにしているわけでもないので、意志の出番がありません。手を伸ばして届く場所に置いてあるかどうか、違いはそれだけでした。

デスクトップを常に空にする

パソコンのデスクトップは、常に何もない状態に保っています。作業のたびにファイルが増えるので、増えたぶんはフォルダへ入れるか消すかして、置きっぱなしにしません。画面を出しても、何も呼びかけてこない状態です。ファイル名が視界に並んでいると、開く予定のなかったものまで思い出してしまう。空にしておくと、思い出す機会そのものが起きません。

Chromeのタブは畳む

Chromeのタブはグループ化して、常時開いておくものは畳んでいます。閉じてしまうと探し直しになるので、タイトルだけ見えないようにする形です。見えなければ意外と気になりません。逆に、タイトルが並んでいると、目に入るたびに「あれ見ないと」を思い出します。目的はタブを減らすことではありません。名前を視界から外すことです。

スマホのホーム画面に何も置かない

スマホのホーム画面には、基本的に何も置いていません。作業で使うときだけそのアプリをトップに持ってきて、終わったらまた戻します。アイコンが並んでいると、開く用事のなかったものまで、指が覚えた位置で押してしまう。ひと手間を挟むだけで、その反射が止まります。同じ手を買い物の側で使った記録がお金を使わない生活は、我慢ではなく「面倒」で作るです。あちらは支払いの手前に数秒を挟む話で、こちらは仕事中に目へ入る回数を減らす話になります。

集中したいときはスマホごと別の部屋へ

集中したいときは、スマホごと別の部屋に置きます。やってきた中で、これがいちばん強かったです。手の届く場所にあると、鳴っていなくても無意識に触っています。引き出しにしまうより、部屋を分けてしまうほうが確実でした。取りに行くのが面倒だという理由だけで、作業のあいだは触らずに済みます。

ゲームは自室から追い出す

仕事中の話だけではなくて、ゲームも自室から追い出しました。プライベートも同じで、目に入るものが減るほど頭が休まります。やらないと決めたわけではなく、置き場所を移しただけです。目に入らなくなってからは、やろうかどうかを考える場面のほうが起きなくなりました。

やっていることをひとことにすると、「意志で我慢する」を「そもそも目に入らない」に置き換える、という話です。意志は毎日ぶれますが、部屋の状態はぶれません。減らす側から集中を作る総論は集中力を高める方法は「足す」より「引く」だったに書いていて、いま読んでいただいているのは、その引き算を机の上とパソコンの画面で実際にやった記録にあたります。

仕事のチャットは切らずに、オンにする時間を決めた

仕事のチャットの通知だけは、全部オフにする形に落ち着きませんでした。代わりに、オンにする時間帯を決めています。

以前は、仕事のチャットも含めて鳴らないようにしていました。たしかに静かにはなったのですが、今度は「見逃していないかな」が気になって、結局こまめに開きに行くようになりました。鳴らないぶん、自分から確認する回数だけが増えている状態です。静かになった意味がありません。見る時間を先に決めておいたほうが、その時間以外は本当に忘れていられます。忘れていられる状態を作るのが目的であって、鳴らないこと自体が目的ではありませんでした。

切る対象と、時間で区切る対象は分けています。スマホに届く通知——SNS、ニュース、アプリのお知らせ——は、相手の都合でこちらに割り込んでくるものなので切ります。仕事のチャットは、こちらが見に行かないと止まらない性質のものなので、時間で区切ります。同じ通知でも、切って何も困らないものと、切ると別の心配が湧いてくるものがありました。

時間の決め方そのものは、厳密にしていません。一日に数回、まとめて開いて返すだけです。返信が遅れて困った場面は、今のところ出ていません。急ぎの用事は、たいてい電話で来ます。

スマホに届く通知を切ったときの記録はスマホの通知を全部オフにしたら1日が静かになったにまとめてあります。あちらで切る相手にしたのはアプリから届く通知で、切らずに残った仕事のチャットをそのあとどうしたか、というのがこの記事です。

遮断して困ったことは、ほとんど起きなかった

ブロックしてきたものを振り返ると、そのほとんどはノイズでした。見なくても困らなかったし、対応しなくても大きな問題は起きませんでした。貴重な注意力を、毎日そこへ渡していたことになります。

本は机から外しただけで、読みたくなったら取りに行けば済みます。デスクトップを空にしても、必要なファイルはフォルダをたどれば出てきます。タブを畳んでも、見たいときには開けます。遮断して失われたものは、思っていたよりずっと少なかったです。

ひとつだけ添えておくと、机の上を片づけた日から人が変わる、みたいなことは起きません。目に入る回数が少しずつ減って、そのぶん頭が途切れなくなる、という地味な変わり方でした。分かりやすい手応えを探していると、たぶん見落とします。

情報遮断についてよくある質問

Q. 情報が多いと、しんどくなるのはなぜですか?
A. 量そのものより、注意が切り替わった回数のほうが大きいと思っています。目に入るたびに一度そちらへ意識が向いて、また戻ってくる。往復自体は数秒でも、何度も起きれば、本当に考えたかったことへ回す余力が残りません。忙しさで説明のつかない疲れ方をしているなら、切り替えの回数を疑ってみるといいかもしれません。

Q. 仕事に必要な情報まで逃しませんか?
A. 僕の場合、逃して困ったことはほとんどありませんでした。遮断しているのは目に入る量であって、必要な情報を取りに行くこと自体は止めていません。管理シートもチャットも、見る時間を決めて自分から開きに行っています。入ってくるのを待つか、取りに行くかの違いだけです。

Q. 通知は全部オフにしたほうがいいですか?
A. 対象によると思います。見分け方として使っているのは、相手の都合で割り込んでくるものか、自分から見に行かないと止まらないものか、という一点です。割り込んでくる側は切って困りませんでした。迷ったときは、切ったあとに自分から開く回数が増えていないかを見てみるといいかもしれません。増えているなら、切るより時間を決めるほうが合っています。

Q. どこから始めればいいですか?
A. 順番はどこからでも構わないと思いますが、僕の場合は机の上がいちばん分かりやすかったです。本でも、書類でも、使っていないケーブルでも、どけると視界から何かが消える感覚があります。感覚さえつかんでしまえば、次に何をどけるかは自分で決められます。

まとめ|空いた場所を、何に使うか

やったことを並べると、机から本をどける、デスクトップを空にする、タブを畳む、ホーム画面を空にする、集中したいときはスマホを別の部屋へ置く。難しいことは何もしていません。共通しているのは、入ってきてから頑張るのをやめて、入口で絞っているという一点です。

情報を遮断する目的は、効率を上げることではありませんでした。空いた場所を、本当に考えたいことに使いたいからです。効率のためというより、そのほうが楽しいから、という言い方のほうが近いと思っています。AIに任せられる作業が増えても、自分の注意をどこへ向けるかだけは、自分で決めるしかありません。

一日ぶんでいいので、自分の注意力がどこへ持っていかれたかを書き出してみてください。たぶん、思っているよりノイズが多いです。僕のリストに並んだのは、机の本もデスクトップもタブも、置き場所を変えるだけで動かせるものばかりでした。

Ryuichi
Writer / 運営者 Ryuichi

金沢を拠点に、AI活用とこれからの暮らし方を実際に試して記録しています。

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