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幸せを感じられないのはなぜか。ドーパミンに振り回される脳と、幸福とは何かの答え

モノも情報も増えたのに、幸せを感じられないのはなぜでしょうか。原因は、SNSや課金が刺激するドー…

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「これだけ恵まれているはずなのに、幸せを感じられない」。そんな感覚を、僕は長いあいだ抱えていました。スマホを開けば通知が光り、ソシャゲに課金すれば強くなれて、SNSではいいねがつく。刺激には事欠かないのに、心のいちばん奥はずっと乾いたままでした。幸福とは何なのか、なぜ手に入れても手に入れても満たされないのか。答えの手がかりになったのが、ドーパミンという脳内物質と、僕らがそれに振り回されている仕組みでした。今日はその話を、自分の失敗もふくめて正直に書きます。

目次

満たされているのに、幸せを感じられない理由

モノも情報も、昔より圧倒的に増えました。それでも「幸せを感じられない」という人は、たぶん多いでしょう。僕自身がそうでした。欲しかったものを買った瞬間はうれしい。ゲームで狙いのキャラを引けた瞬間は最高に気持ちいい。ところが、その高揚は驚くほど早く消えます。数日後にはまた、次の刺激を探している自分がいました。

白状すると、僕はかつてソーシャルゲームの重課金者でした。課金して強くなる、ランキングが上がる、その瞬間は確かに気持ちよかった。でも、気持ちよさが切れると、また課金したくなる。満たされているはずなのに、根っこはずっと飢えていました。刺激で得た快楽は、幸福の残高を増やしてはくれなかったんです。むしろ、次はもっと強い刺激じゃないと満足できなくなる。乾きが深まっていく感覚のほうが近い。

ドーパミンは「幸せ」ではなく「もっと欲しい」の合図だった

調べていくうちに腑に落ちたのは、僕らが「幸せ」だと思っていたものの正体が、たいていドーパミンだったということです。ドーパミンは、報酬を得たときというより、報酬を「期待した」ときに出る物質だと言われています。だから、SNSを開く前のあの一瞬、通知が来たかもしれないと思ってスワイプするあの瞬間に、いちばん強く出る。中身を見たあとではなく、見る前のワクワクがピークなんです。

スマホもSNSも課金も、この仕組みをうまく突いて作られています。ドーパミンは「満足」ではなく「もっと欲しい」を焚きつける物質で、いくら追いかけても「もう十分だ」という感覚にはたどり着けません。追えば追うほど、基準だけが上がっていく。かつての僕がそうだったように、課金額が増えても、フォロワーが増えても、心の底はいっこうに満たされない。ドーパミンで気持ちよくなっているだけで、根っこの幸せは感じられていない状態です。

飢えの正体にはっきり気づかせてくれたのが、ブッダの考え方をまとめた一冊でした。読んでみて、僕は自分の乾きの正体がようやく分かった気がしました。読んだときのことは反応しない練習で楽になった話に書いているので、興味があれば読んでみてください。刺激に反応しつづける自分から、少し降りるだけで、驚くほど心が静かになります。

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見落としがちな点

ドーパミンそのものが悪者なわけではありません。学習や意欲の源でもある大切な物質です。問題は、SNSやショート動画や課金の仕組みが、この「もっと欲しい」のスイッチだけを人工的に押しつづけてくること。快楽の回数は増えるのに、幸福の総量は増えない。むしろ基準が上がって、以前なら満足できたものに満足できなくなります。

幸福とは、足りない何かを埋めることではなかった

では、幸福とは何だったのか。いろいろ試して僕がたどり着いたのは、拍子抜けするくらいシンプルな答えでした。足りないものを埋めるのではなく、すでにあるものに気づくこと。昔の人が「足るを知る」と言っていたのは、精神論ではなく、脳の仕組みに対するとても実用的な処方箋だったんだと思います。

古代ギリシャのエピクロスも、似たことを言っていました。快楽主義者だと誤解されがちな人ですが、彼が説いたのは贅沢な快楽ではなく、痛みや不安のない静かな心の状態でした。パンと水と、気の置けない友人がいれば十分だ、と。刺激をどんどん足していく方向ではなく、余計なものを引いていった先に、穏やかな満足が残る。余計なものを引く生き方についてはエピクロス的に生きるという選択で詳しく触れています。よければあわせてどうぞ。

僕の実感でも、幸福度が上がったのは、何かを手に入れたときではありませんでした。むしろスマホを手放し、課金をやめ、余計な刺激を引き算していったときです。減らしたぶんだけ、朝のコーヒーの香りや、窓から入る光や、散歩の途中で見た空に、ちゃんと心が動くようになりました。感度が戻ってきた、という言い方が近いかもしれません。強い刺激で麻痺していた舌が、薄味のだしのうまみをまた感じられるようになった、そんな感覚です。

「今」に戻ると、幸せは静かに戻ってくる

もうひとつ気づいたのが、幸せを感じられないときの僕は、たいてい「今」にいなかった、ということです。スマホを見ているときの意識は、過去の誰かの投稿か、まだ来ていない未来の通知に飛んでいます。目の前のごはんを食べながら、頭は別のことを考えている。今この瞬間から、心だけがずっと出かけている状態でした。

幸せというのは、たぶん未来のどこかに置いてある宝物ではなくて、今この瞬間にしか感じられないものなんだと思います。おいしいと味わえるのも、気持ちいいと感じられるのも、全部「今」です。だから、注意を今に戻すだけで、実はもう手のなかにあった幸せに気づける。目の前の人との会話にちゃんと向き合う、食べているものを味わう、歩きながら風を感じる。ドーパミンを追いかける矢印を、外の刺激から、今ここへ折り返してやる感覚です。

そして、根っこの満足をくれるものは、たいてい派手ではありませんでした。信頼できる人とのつながり、体を動かしたあとの心地よい疲れ、何かに没頭して時間を忘れた感覚。どれもドーパミンのような瞬発力はないぶん、あとにちゃんと残ります。刺激の快楽が花火だとすれば、こちらは薪ストーブのような、じんわり続く暖かさに近いのかもしれません。

快楽ではないほうの満足を、もう少し長い時間軸で考えた記事もあります。AIが仕事を巻き取る時代に働く世代が何を手応えにするかは生きがいとは何かという話に書きました。よければあわせて読んでみてください。

よくある質問

Q. お金や成功では、幸せになれないということですか?
A. そうは思いません。ある程度のお金や達成は、不安を減らし、選択肢を増やしてくれます。ただ、それらは「不幸を減らす」働きが中心で、一定を超えると幸福度の伸びは緩やかになると言われています。手に入れた瞬間のドーパミンを幸福そのものと勘違いすると、いくら増やしても満たされない、という迷路に入りやすいのだと思います。

Q. 幸せを感じられないのは、うつなどの病気のせいでしょうか?
A. 何をしても楽しめない、眠れない、食べられないといった状態が続くなら、それは意志や考え方の問題ではありません。ためらわず専門家に相談してください。今回お話ししているのは、あくまで日常のなかで刺激に慣れてしまった感度の話です。

Q. ドーパミンを完全に断つべきですか?
A. いいえ、断つ必要はありません。ドーパミンは意欲や学習に欠かせない物質です。減らしたいのは、SNSやショート動画のように「もっと欲しい」だけを人工的に焚きつけてくる刺激のほうです。仕組みで距離を取り、量を戻していくくらいがちょうどいいでしょう。

Q. まず何から始めればいいですか?
A. いちばん手軽なのは、一日のどこかで刺激を一つ引き算してみることです。食事のあいだだけスマホを伏せる、寝る前の30分は画面を見ない。それだけでも、麻痺していた感度が少し戻ってきます。埋めるより先に、引く。そこから始めてみてください。

この記事の結論

幸せを感じられないのは、心が弱いからでも、まだ足りないからでもありません。SNSや課金や通知でくり返し得ていた快楽が、ドーパミンという「もっと欲しい」の合図で、幸福の残高そのものは増やしてくれなかっただけです。足りないものを追う方向をいったん止めて、余計な刺激を引き算する。注意を今この瞬間に戻す。すると、すでにそこにあった小さな満足に、また気づけるようになります。追いかけるのをやめてみるかどうかは、あなたが決めていい選択です。

Ryuichi
Writer / 運営者 Ryuichi

金沢を拠点に、AI活用とこれからの暮らし方を実際に試して記録しています。

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