やりたいことがわからないのは探し方の問題。30代から動きながら見つける4つの手順
やりたいことがわからないのは、感度が鈍いからではなく探し方の問題でした。好きなことを100個書き…

「やりたいことがわからない」と検索して出てくるのは、たいてい「好きなことを100個書き出そう」という話です。僕も一度やってみて、20個目くらいで手が止まりました。仕事は回っていて生活も困っていない、なのに何がやりたいのかだけが出てこない。30代に入ってから、その問いは一段重くなった気がします。ただ、しばらく試して思ったのは、感度が鈍いのではなく探し方が合っていないだけだ、ということでした。動きながら見つけていく手順を書きます。
やりたいことがわからないのは、探し方の問題だった
好きなことを書き出す、適性診断を受ける、自己分析シートを埋める。どれも真面目な方法ですが、共通して「自分の中にすでに答えが埋まっていて、掘れば出てくる」という前提に立っています。僕がつまずいたのは、まさにその前提でした。掘っても出てこないものを掘り続けると、出てこない自分が悪いという話にすり替わっていきます。
やりたいことが見つからない人の多くは、感性が鈍いわけでも情熱が足りないわけでもないでしょう。まだやったことがない範囲から選ぼうとしているだけです。食べたことのない料理の中から好物を当てろと言われても答えられません。やりたいことは、探して見つかるものではなく、動いた後から言葉になるものでした。
やりたいことは、動いた後に言語化される
順番が逆だと気づいたのは、朝の時間に読書や書きものを続けていた頃です。最初は「やりたいこと」だとは思わず、朝が静かで集中できたから続けていただけでした。半年ほど経って振り返ったとき、時間を忘れていたのは「調べて、まとめて、人に渡す」瞬間だったと気づきます。行動に、後から名前がついた形です。
言語化されるまでには、必ずタイムラグがあります。渦中では「なんとなく楽しい」以上の解像度が出ず、数ヶ月分たまってはじめて共通点が浮かびます。逆に言えば、動かないかぎり材料は増えません。頭の中だけで考えている時間は、データが1件も増えない時間です。僕がやってきた進め方を、4つに分けて書きます。
手順1|やりたくないことから消していく
好きなことは出てこないのに、嫌なことは驚くほどすらすら出てきます。人前で長時間しゃべるのがしんどい、突然の電話で作業を止められるのがつらい、他人の機嫌をうかがう仕事は続かない。僕は10分ほどで20個並びました。やりたくないことのほうが、輪郭がはるかにはっきりしています。
消去法は消極的に見えますが、選択肢が多すぎて動けない人には実用的です。100あった選択肢が30に減るだけで、次に何を試すか決めやすくなります。「やりたい仕事は」と聞かれると固まるのに「絶対に嫌な条件は」なら即答できる方は多いのではと感じます。
紙でもテキストでもかまいません。「一般的に嫌なこと」ではなく「先週うんざりした場面」を書くのがコツです。「人間関係が苦手」ではなく「断れずに引き受けた資料作りで土曜が半日つぶれた」くらい具体的に書くと、避けるべき条件が見えてきます。
手順2|手応えがあった瞬間を記録する
消したあとに必要なのが、残った側の記録です。1日の終わりに、少しでも手応えがあった場面を1つだけ書き残します。時間を忘れていた、思ったより疲れなかった、人に説明していて楽しかった、くらいの温度で十分です。
大事なのは感想ではなく、時間を忘れた場面を事実として残すことだと思っています。「充実していた」だけでは後から使えません。「午前中に資料の構成を組み直していたら2時間経っていた」と書けば、1ヶ月後に読み返したとき、どの作業で没頭するのかが見えてきます。僕は毎晩3行だけ書く形に落ち着きました。書き方は3行日記のやり方にまとめています。興味があれば、ぜひご覧ください。
1週間分では何も見えません。1ヶ月で同じ場面が2〜3回出てきて、3ヶ月で偏りが出ます。やりたいことの正体は、たいてい偏りの中にあるのでしょう。
手順3|小さく試して、1週間で判断する
気になるものが1つでも浮かんだら、すぐ試します。ただし、いきなり本格的に始めないのが肝心です。副業をやりたいから会社を辞める、写真を撮りたいから高いカメラを買う、という入り方だと、合わなかったときに引き返しづらくなります。
僕がやっているのは、期限を1週間に区切って最小の形で触ることです。文章を書きたいなら1本だけ書いて誰かに見せる。動画ならスマホで3分の動画を1本作って終わりにする。1週間後に「もう一度やりたいか」だけ自分に聞いて、答えが鈍かったら気持ちよくやめます。やめた経験も材料で、やりたくないことリストに1行足せば前進です。
始める前に「何をどこまでやったら完了か」を1文で書いておきます。例:「今週は、興味のあるテーマで800字の文章を1本書いて友人1人に読んでもらう」。うまくいったかではなく、決めたところまで到達できたかだけを見ると、判断が濁りません。
手順4|人に話して、言語化してもらう
記録がたまってきたら、誰かに話します。自分の中だけで考えていると、感覚が言葉にならないまま溶けていきます。人に説明した瞬間、はじめて輪郭が出てくるでしょう。僕はコーチングを受けはじめてから進み方が変わりました。答えをもらったのではなく、話を整理して返してもらううちに、自分が何に反応しているのか見えてきた形です。
相手がいない場合は、AIを壁打ち役にする手もあります。ChatGPTでも話せますが、僕が普段使っているのはClaudeです。長い文章を読ませても文脈を保ってくれるので、日記の1ヶ月分を貼り付けて「僕が没頭している作業の共通点を挙げて、質問で返して」と頼んでいます。答えを出させず、質問を返させるのが要点です。「なぜその作業だと時間を忘れるのか」と聞き返されると、気づいていなかった話が出てきます。進め方はAIを壁打ち相手にするやり方に書きました。よければあわせて読んでみてください。
「他人の期待」に、自分の望みが上書きされていないか
いくら手順を回しても、言葉が出てこない時期が僕にもありました。振り返ると、手順以前のところで、自分の望みが他人の期待に上書きされていたのだと思います。
以前働いていた職場で、「能力は高くなくていいから、扱いやすくて素直な人間でいてほしい」という趣旨のことを言われた経験があります。仕事を失いたくない気持ちもあって、僕はその形に自分を寄せました。求められた役割を演じるうちに、何が評価されるかは即答できるのに、自分が何をしたいかは答えられない状態ができあがります。やりたいことだと思っていたものが、よく見ると他人の期待を翻訳しただけのものでした。
ほどけたきっかけは、大げさなものではありません。朝に一人の時間をつくったこと、毎日の記録を書き続けたこと、コーチングで話を聞いてもらったこと。3つとも、他人の評価が入り込まない時間だったのが共通点でしょう。誰も見ていない場所で自分の言葉を出す時間が増えると、期待と願望の区別がついてきます。手順の前に、評価されない時間を1日15分つくるほうが先かもしれません。
AIが作業を巻き取るほど、やりたいことが問われる
仕事の進め方は、ここ数年で明らかに変わりました。僕自身、資料づくりや調べもの、下書きの多くをAIに渡しています。速くなったのはありがたい一方、正直に言えば、自分の役割が薄くなっていく感覚もあります。
ただ、渡してわかったのは、AIに任せられるのは「何をするか」が決まった後の部分だけだということです。何を作るか、なぜやるか、どこへ向かうかを決める部分は、こちらが持ったままでした。作業が巻き取られるほど、何をやりたいのかという問いだけが残ります。やりたいことがわからない状態は、これから他人事ではなくなっていくのでしょう。
だからといって、焦って壮大な使命を掲げる必要はないでしょう。仕事の意味や生きがいそのものについては、AIが仕事を担う時代の生きがいとは何かのほうで書きました。あちらが「意味の話」、こちらが「動き方の話」という分担なので、考えを深めたい方はそちらもどうぞ。
30代・40代でやりたいことがわからなくても、遅くはない
「やりたいことがわからない 30代」で検索する人が一定数いるのは、周りが方向を定めたように見える時期だからでしょう。同期が独立した、後輩が資格を取った、SNSでは誰もが好きなことで生きているように見える。焦る気持ちはわかります。
ただ、30代の強みは判断材料が10年分たまっていることです。働いてきた人には「続かない」「向いていない」という実測データがあり、消去法が使えます。不利ではありません。40代、50代で方向を変えた人も普通にいます。数年かけて探すのは、遅すぎる話ではないでしょう。
もうひとつ、忘れずに書いておきたいことがあります。やりたいことがなくても、生きてはいけます。仕事は手段と割り切り、休日に穏やかな時間を過ごす生き方は、まったく劣っていません。「見つけなければ」という圧が苦しいなら、圧のほうを先に下ろすほうが健康的でしょう。
よくある質問
Q. 仕事でやりたいことがわからないとき、転職したほうがいいですか?
A. 転職はいちばん大きな試し方なので、いきなり選ぶ必要はないでしょう。今の職場で担当を変える、別の業務を手伝う、副業で小さく試すなど、負荷の低い方法が先にあります。それでも「やりたくないこと」ばかり増えるなら、動く理由としては十分でしょう。
Q. やりたいことが見つかる本はありますか?
A. きっかけをくれる本はありますが、読むだけで見つかる本はないと考えたほうが安全でしょう。本の役割は考える枠組みを渡すことなので、読んだら必ず書き出す・試すところまでセットにしてください。読むこと自体が目的になると、探している感じだけが積み上がります。
Q. 自己分析の診断ツールは役に立ちますか?
A. 自分の傾向を言葉にする助けにはなります。強みや性格タイプの結果は、記録を読み返すときの手がかりになります。ただ、診断結果は「向いている可能性」であって「やりたいこと」ではないので、試す順番を決める材料くらいに扱うのがちょうどよいと思います。
Q. 試したいことが多すぎて、逆に決められません。
A. 全部やってしまうのが早道です。ただし1つあたり1週間、同時に1つだけと決めてください。1週間ずつ順に触れば2ヶ月で8個試せます。優先順位を考える時間より、実際に触った1週間のほうが多くを教えてくれます。
まとめ
やりたいことがわからないのは、能力や感性の問題ではなく、探し方の順番が逆になっているだけ、という場合が多いのでしょう。頭の中を掘るのではなく、やりたくないことを消し、手応えがあった瞬間を記録し、小さく試して1週間で判断し、人やAIに話して言葉にしてもらう。材料が増えるぶんだけ前に進みます。今日から1つ始めるなら、寝る前にやりたくないことを3つ書き出すところからで十分です。


