SuggescoMagazine 第 76 号 P.01
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請求書テンプレートは卒業していい。個人事業主が条件を1枚書いて、AIに毎回作らせる仕組み

無料の請求書テンプレートは山ほどあるのに、毎月同じところで詰まる。原因は様式ではなく、前回いくら…

請求書のテンプレートは、探せばいくらでも見つかります。無料のエクセルも、PDFも、インボイス対応も、源泉徴収欄つきも。それなのに毎月の請求書づくりで時間が溶けるのは、様式が手元に無いからではありませんでした。個人事業主が請求書テンプレートを何枚も抱えたまま詰まる原因は、前回いくらで出したのか、宛名をどう書いたのかを毎回思い出せないところにあります。私は様式を選ぶのをやめて、条件だけを一度書き留めておき、請求書そのものは毎回AIに作ってもらう形に変えました。その作り方をまとめます。

目次

請求書テンプレートを何枚も持っていた頃、毎月ここで詰まっていた

私のテンプレートフォルダには、いつのまにか同じような請求書が並んでいました。「4月請求書」「4月請求書のコピー」「4月請求書のコピー5」。取引先ごとに少しずつ手を入れたものが、どれが最新か分からないまま増えていったものです。

毎月の作業を分解すると、詰まっていたのは書類を作る工程ではありませんでした。

  • どのファイルが最新の様式だったか探す
  • 前回いくらで請求したかを、去年のPDFを開いて確認する
  • 宛名が「御中」だったか担当者名だったかを、過去のメールで検索する
  • 税込の金額をちょうどに合わせるために、電卓で逆算する
  • 作ったファイルをどこに置いたか分からなくなる

ある火曜の夜、請求書を1通つくるだけのつもりが40分かかったことがあります。手を動かしていた時間はごくわずかで、残りは全部、探す時間と思い出す時間でした。毎月の請求業務が重いのは、作業量ではなく、記憶に頼っているからだったというのが、いまの私の理解です。

テンプレートを配る記事が答えていないこと

2026年8月時点で「請求書 テンプレート 個人事業主」を検索すると、上位はほぼ会計ソフト会社のテンプレート一覧ページで埋まります。マネーフォワード、freee、弥生といった各社が、税理士監修の様式を無料で配っている状態です。品質はどれも高く、様式そのものを探しているなら、あの中から選ぶのがいちばん早いでしょう。

ただ、上位のページを一通り読んでみて気づいたことがあります。「どの様式を選ぶか」の答えは山ほどあるのに、「毎月の迷いをどう減らすか」に踏み込んだページはほとんど無いということです。唯一近かったのが、作成時のポイントとして「案件の進捗や請求書の発行状況を管理する」と書かれていた1本だけでした。

様式は、一度決めれば終わる問題です。困りごとが毎月おかわりしてくるのは、様式の外側にある条件のほうでした。

様式を選ぶのをやめて、条件のほうを先に書く

請求書は、2つの要素でできています。1つ目が条件、つまり誰に・何を・いくらで請求するのか。2つ目が様式、つまり紙面のレイアウトです。

テンプレートは後者しか解決しません。そして毎月あなたを止めているのは、たいてい前者のほうです。

そこで私は、条件のほうを最初に1か所へ書き出すことにしました。取引先ごとに、宛名の表記・よく使う品目・単価・過去に出した履歴を、テキストファイルに残しておく。条件さえ手元にあれば、様式は毎回ゼロから作らせても構わないという考え方です。AIに「A社に今月の請求書を、前回と同じ内容で」と頼めば、そのファイルを読んで書類まで作ってくれます。

一人で仕事を回す人がAIを使うときの入口については、AIで業務を効率化する、個人のはじめ方でも「まず1つだけ自動化する」という話を書きました。請求書は、その最初の1つに向いている作業だと思います。

用意するのは、ファイル3つだけ

特別なソフトは要りません。フォルダを1つ切って、その中に3つ置くだけです。

経理/
└─ 請求書/
    ├─ 取引先マスター.md   … 条件(誰に・何を・いくらで)
    ├─ ひな形.html          … 様式(1つだけ持つ)
    └─ 2026/                … 発行済みの保管場所
        ├─ 株式会社アオゾラ様_2026年8月請求書.pdf
        └─ 合同会社ミドリノ様_2026年8月請求書.pdf

会社名は例として架空のものを置いています。以下、1つずつ中身を見ていきます。

1|取引先マスターに書くこと

いちばん大事なファイルです。取引先ごとに、次の項目を書いておきます。

  • 宛名の表記(「株式会社アオゾラ 御中」なのか、担当者名を入れるのか)
  • 先方の担当者と連絡先
  • よく使う品目と単価(税抜で書いておくと計算が楽になります)
  • 保存先とファイル名の形
  • 取引履歴のメモ(いつ・いくらで・何の名目で出したか)

とくに履歴のメモが働きます。ここが埋まっていると「前回と同じ条件で」という頼み方が通るようになり、過去のPDFを開き直す作業がまるごと消えました。

自分側の情報、つまり屋号・住所・連絡先・インボイスの登録番号・振込先も、毎回同じなので同じ場所に固定で書いておきます。毎月打ち直すには地味に面倒な項目です。

2|様式のひな形は1つだけ持つ

テンプレートを何枚も持たない、というのがここでの決めごとです。取引先ごとに様式を分けはじめると、最新版がどれか分からなくなる問題がそのまま戻ってきます。

私はHTMLで1枚だけ用意しています。エクセルでも構いませんが、HTMLにしておくと、金額や品目を差し替える作業をAIに任せやすく、そのままPDFにもできます。

3|保存の置き場とファイル名を決める

年ごとにフォルダを切って、ファイル名を「取引先名+年月+請求書」の形にそろえます。私は株式会社アオゾラ様_2026年8月請求書.pdfという形で統一しました。

1つ、決めておくと後がすごく楽になることがあります。このフォルダに入っていない月は、請求していない月と定義してしまうことです。売上をどこで数えるか迷わなくなり、「今月いくら請求したか」を確認したいときも、フォルダを見れば済みます。

毎月やることは、頼むだけになる

3つのファイルが揃うと、月初の作業は指示を1つ出すだけになります。「アオゾラさんに8月分の請求書を、前回と同じ内容で」と頼めば、宛名も単価も履歴もマスターにあるので、それだけで通ります。

なかでも、AIに任せて特に楽になった工程が2つありました。

税込ちょうどの金額に合わせる

「税込25,000円ぴったりで出したい」という場面は、案外よくあります。税抜は税込を1.1で割って四捨五入し、消費税は整数に丸めたうえで、合計が税込ちょうどになるように調整する。文字にすると当たり前ですが、私は毎回電卓を叩いていました。

丸め方をルールとして書き残しておけば、あとは計算ごと任せられます。金額は自分でも必ず確認しますが、最初の計算を毎回やらずに済むだけで負担が変わりました。

PDFにする(ここがいちばん手こずりました)

正直なところ、PDF化がいちばん詰まった工程です。私が順に踏んだのは次の3つでした。

  • Macの表計算アプリから書き出したら、中身が真っ白なPDFができた
  • 変換用のソフトを使おうとしたら、そもそも入れていなかった
  • Excelを自動操作しようとしたら、権限を尋ねるダイアログが出たまま止まった

最終的に落ち着いたのは、HTMLで作った請求書をChromeのヘッドレスモードで印刷するやり方です。ターミナルから --headless --print-to-pdf を渡して呼び出すもので、レイアウトが崩れず、毎回同じ見た目で出てくれます。2026年8月時点の私の環境ではこれが一番安定していますが、環境によって事情は変わるので、うまくいかなければ素直に会計ソフトの発行機能を使うほうが早いでしょう。

編集できる形も残したい相手には、PDFと表計算ファイルの両方を保存しておくと安心です。

インボイスと源泉徴収まわりで、外せないこと

様式を自分で持つ以上、記載内容の責任も自分で持つことになります。テンプレート配布ページが共通して挙げている必須項目は、次の5つです。

  • 書類を作成した人の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 取引の内容
  • 取引金額
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

適格請求書(インボイス)として出すなら、これに登録番号税率ごとに区分した対価の額と適用税率税率ごとの消費税額が加わります。ひな形を1枚作るときに、この欄を最初から入れておくのが確実です。

源泉徴収については、個人事業主向けのテンプレートに源泉徴収欄つきが多く用意されています。対象になるかどうかは業務の内容と支払う側の立場によって変わるので、自分の取引がどれに当たるかは、取引先か税理士に確認するのが安全です。私も、判断に迷う案件は毎回先方に聞いています。制度の細かい要件は変わることもあるため、記載項目は国税庁の案内で最新の内容を確認してください。

それでも、テンプレートを選んだほうがいい人

さんざん書いておいてなんですが、全員に勧める話ではありません。次のような場合は、配布されているテンプレートを1枚もらってくるほうが早いと思います。

  • 取引先が1社だけで、請求が年に数回。仕組みを作る手間のほうが上回ります
  • エクセルの計算式で自動計算したい。計算式が組まれた無料テンプレートは完成度が高いです
  • すでに会計ソフトで発行から入金確認まで回っている。わざわざ外に出す理由がありません

私の場合は、取引先が増えて毎月複数枚を出すようになった頃から、条件を書き出す方式のほうが軽くなりました。分かれ目は取引先の数と発行の頻度あたりにありそうです。

あわせて言うと、この方法は会計ソフトの置き換えにはなりません。仕訳や確定申告そのものはソフトに任せています。ここで作っているのは、その手前にある書類と台帳の部分です。

よくある質問

Q. AIに作らせた請求書を、そのまま取引先へ送っていいですか?
金額と宛名だけは、送る前に必ず自分の目で確認してください。私も生成された内容をそのまま送ったことは一度もありません。丸ごと任せるのではなく、探す工程と計算の工程を任せて、確認は自分でやる、という分け方が現実的だと思います。

Q. 会計ソフトの請求書機能と、どちらがいいですか?
入金の消し込みや売掛金の管理までまとめたいなら、ソフトのほうが向いています。書類を出すこと自体より、取引先ごとの条件を思い出す作業に時間を取られているなら、条件を書き出す方式が合うでしょう。両方使っても構いません。

Q. 取引先マスターはエクセルやスプレッドシートでもいいですか?
問題ありません。大事なのは形式ではなく、置き場所を1か所に決めることです。同じ情報が2か所にあると、片方だけ更新して両方が古くなります。

Q. インボイスの登録をしていない場合はどうなりますか?
登録番号の欄が無いだけで、請求書そのものは発行できます。ひな形に欄だけ作っておいて、登録したら埋める形にしておくと後の作り直しが要りません。

まとめ

請求書のテンプレートは、個人事業主にとって出発点としては便利なものです。ただ、毎月同じところで止まっているなら、原因は様式ではなく、条件を毎回思い出していることのほうかもしれません。

やることは3つだけでした。取引先ごとの条件を1つのファイルに書く。様式のひな形を1枚だけ持つ。保存の置き場とファイル名を決める。あとは毎月、頼むだけになります。

最初の一歩としては、取引先マスターを1社分だけ書いてみるところからで十分だと思います。宛名の表記と、前回いくらで出したかを書き写すだけなら、5分もかからないはずです。次の請求のときに、探す時間がどれくらい減るかを確かめてみてください。

お知らせSuggescoでは、こうした事務や制作まわりの仕組みづくりのご相談も受けています。自分の業務のどこをAIに任せられるか整理したい方は、お問い合わせからお気軽にどうぞ。売り込みはしませんので、まず話を聞いてみたいという段階でも構いません。
Ryuichi
Writer / 運営者 Ryuichi

金沢を拠点に、AI活用とこれからの暮らし方を実際に試して記録しています。

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