音声入力とAIを組み合わせたら、画面を見る時間が減った。歩きながらメモして後で整えるやり方
パソコンの前に座らないと仕事は始まらない、と思っていました。スマホの音声入力で歩きながら喋ってメ…

パソコンの前に座らないと仕事が始まらない。私はずっと、そういうものだと思っていました。音声入力とAIを組み合わせるようになってから、その思い込みがだいぶ崩れています。歩きながら喋ってメモに考えの頭出しだけ残し、机に戻ってからAIに整えてもらう。順番を入れ替えただけですが、画面を見ている時間がはっきり減りました。使っているのはスマホの標準の音声入力と、普段から使っているAIだけです。実際の流れと、うまくいかない場面も含めて書きます。
キーボードより、喋るほうが速い場面がある
断っておくと、何でも喋ったほうが速いという話ではありません。定型の返信メール、数字が並ぶ表、細かい修正。指で打ったほうが確実に速い作業はいくらでもあります。喋るほうが速いのは、もっと手前の段階です。まだ形になっていない考えを、とりあえず外に出すとき。頭に浮かんだ言葉に指はなかなか追いつきませんが、口はわりと追いついてくれます。
もうひとつ大きいのが、打っている最中に推敲が始まってしまう問題です。キーボードだと、一文書いては消し、言い回しを直し、また消す。書くと同時に自分で検閲しているような状態になります。喋っているときは消せません。粗いまま、言い淀みごと全部出ていきます。粗いまま全部出したほうが、あとで使える素材はずっと多く残ります。整えるのは後回しにできますが、消えてしまった思いつきは戻ってきません。
音声入力とAIを組み合わせると、作業が二段になる
やっていることを分けると、「出す」と「整える」の二段になっています。キーボードで書いていた頃は、二つを同時にやっていました。考えながら、言葉を選びながら、体裁を整えながら打つ。同時にやるから遅いし、疲れます。
音声入力では「出す」だけをやります。文法も語順も気にせず、思いついた順に喋る。整えるほうは机に戻ってからAIに渡す。喋る担当と、整える担当を分けただけで、頭の負担がずいぶん軽くなりました。歩いている間の私は、体裁のことを一切考えなくてよくなったわけです。
①外で出す:スマホのメモアプリに音声入力で喋る。誤変換も言い直しもそのまま放置する。②机で整える:出てきたテキストをAIに貼り、話し言葉を書き言葉に直してもらう。③自分で読み直す:AIが整えた文章を最後に自分の目で見て、言いたいことがズレていないか確認する。三段目を省くと、自分の言葉ではないものが混ざります。
歩きながらメモを取る、実際の流れ
私の場合、いちばん喋っているのは朝の散歩中です。三十分ほど歩く間、スマホはポケットに入れたまま、メモアプリの音声入力をオンにして喋ります。今日書く原稿の骨組み、返事に迷っている相談への答えの方向、詰まっている問題の整理。話し終えたらポケットに戻して、また歩きます。画面はほとんど見ません。
移動中も同じです。駅まで歩く十分、乗り換えの待ち時間。まとまった作業はできない長さですが、頭出しには十分です。帰って机に座ると、雑なテキストがすでにメモに残っている。ゼロから白い画面と向き合う時間が消えた分だけ、着手が軽くなりました。
大事なのは、完成品を作ろうとしないことです。喋りながら整った文章を作ろうとすると、途端に言葉が詰まります。私が外でやっているのは、あくまで頭出しです。使えそうな断片が三つ四つ残ればその日はよかった、くらいの気持ちでいます。
音声入力の精度は、思っているより気にしなくていい
音声入力を避けている方の多くは、精度を心配しているのだと思います。私も最初はそうでした。使ってみると、気にしなくていい部分がかなりありました。
まず句読点。機種によっては「まる」「てん」と言えば入りますが、私は言いません。読点なしのだらだらした一続きのテキストになりますが、あとでAIが直します。次に専門用語や固有名詞。普通に間違えます。サービス名やカタカナ語は、たいてい別の漢字に化けると思っておいたほうがいいでしょう。間違っていても立ち止まりません。誤変換を直さずに喋り続けたほうが、結果として速く終わります。一度直しにいくと、そこで思考の流れが切れてしまうからです。
場所についても、完全に静かでなくて構いません。歩道の脇や駅の構内でも、口元さえマイクに近ければだいたい拾ってくれます。ワイヤレスイヤホンのマイクを使うと、スマホを顔に近づけずに済むので、歩きながらでも喋りやすくなります。むしろ扱いに困るのは雑音より、人の目のほうでしょう。
喋った雑なテキストを、AIに整えてもらう
机に戻ったら、メモの中身をまるごとAIに貼ります。私が使っているのはClaudeです。頼み方は、いつもほぼ同じにしています。
「話し言葉のまま音声入力したメモです。文意は変えずに、書き言葉として読める形に整えてください。要約はしないでください。内容を足すこともしないでください」。肝は、要約させないところにあります。放っておくとAIは親切に短くまとめようとしますが、まとめられた瞬間に、自分が喋ったときの言い回しや引っかかりが消えてしまいます。残したいのは、むしろ整いきっていない部分のほうです。
ChatGPTでも同じことはできます。私がClaudeを使っているのは、客観的に優れていると言いたいからではなく、自分の仕事の回し方がClaudeを中心に組んであるからです。使い慣れているぶん、指示の出し方が雑でも通じます。まずはお使いのAIで試してみて、物足りなくなったら乗り換えを考えるくらいで十分でしょう。
なお、音声入力とAI文字起こしは似ているようで別物です。音声入力はスマホがその場でテキストにする仕組みで、長い会議や取材の音源をまとめてテキストにしたいなら、文字起こしのほうが向いています。手順はAIで文字起こしを無料でやる方法に書きました。長い音源を扱う予定がある方は、あわせてご覧ください。
画面を見る時間が減って、戻ってきたもの
音声入力を使うようになって思わぬ収穫だったのが、体のほうの変化です。スマホに向かって指を動かしている間、人はだいたい首を前に倒しています。歩きながら喋っている時間には、その姿勢がありません。夕方の首と肩の張り方が、以前より軽くなりました。
目もそうです。画面から出る光を見続ける時間が短くなると、夜になったときの目の乾きが違います。加えて、通知が視界に入らないのも大きいところでしょう。画面を開けば、書こうとしていたこととは無関係な赤いバッジが必ず目に入ります。喋っている間はスマホがポケットの中なので、通知に注意を持っていかれる瞬間がそもそも訪れません。
画面を見る時間そのものを減らす話は、デジタルデトックスをやってみた記録に詳しく書いています。興味があれば、ぜひご覧ください。通知を切るところから始めたい方には、スマホの通知を全部オフにした話のほうが実行しやすいかもしれません。
音声入力に向かない場面もあります
全部を音声に寄せているわけではありません。向かない場面のほうがはっきりしているので、先に知っておいたほうが挫折しにくいでしょう。
まず、人がいる場所。カフェや電車内で仕事の内容を喋るのは、周りにも自分にも無理があります。私も、人通りのある道では喋りません。次に、正確さが要る入力。金額、日付、口座番号、固有名詞の並んだリスト。一文字の間違いが致命傷になる情報は、面倒でも指で打ったほうが安全です。3つ目は、細かい修正作業。「三行目のこの語を消す」といった編集は、喋って指示するより自分でカーソルを動かしたほうが速く終わります。
もうひとつ、外に出したくない話も音声入力には向きません。スマホの音声入力は多くの場合、音声データがどこかのサーバーで処理されています。他人の個人情報や、外に出せない相談ごとを喋るのは避けたほうがよいでしょう。私も、その手の話は音声では扱わないようにしています。
よくある質問
Q. 音声入力は、どのアプリを使えばいいですか?
A. スマホの標準キーボードに付いている音声入力と、標準のメモアプリで十分です。iPhoneでもAndroidでも、キーボードのどこかにマイクのアイコンがあるはずなので、押して喋るだけで始められます。位置は機種やキーボードアプリによって違うので、見当たらなければキーボードの設定を一度覗いてみてください。専用アプリを探し始めると、アプリを選ぶために画面を見る時間が増えてしまうので、まずは手元にあるもので試すのがおすすめです。
Q. 句読点や改行はどうやって入れますか?
A. 「まる」「てん」「かいぎょう」と声に出せば入る機種が多いですが、私はほとんど使っていません。区切りのない一続きのテキストのまま、あとでAIに整えてもらったほうが、喋るリズムが途切れずに済みます。人に見せる前提のメモだけ、その場で入れておけばいいと思います。
Q. 歩きながら喋るのは、周りから変に見えませんか?
A. 正直、まったく気にならないとは言えません。私はイヤホンのマイクを使っています。通話しているのと見た目が変わらないので、人の少ない道なら気になりません。抵抗が消えないなら、部屋の中や停めた車の中など、誰もいない場所から始めるほうが続きます。
Q. 音声入力で書いた文章を、そのまま公開してもいいですか?
A. 公開前にひと手間かけたほうが安全です。AIに整えてもらったあと、必ず自分で読み直してください。話した内容と違うニュアンスに寄っていたり、言っていないことがきれいに足されていたりします。整える作業をAIに任せても、最後に責任を持つのは書いた本人です。
まとめ
音声入力とAIを組み合わせてやっていることは、突き詰めれば「出す」と「整える」を分けただけです。歩きながら粗いまま喋って、机に戻ってからAIに書き言葉へ直してもらう。役割を二つに割っただけで、白い画面とにらみ合う時間と、首を前に倒している時間が減りました。精度は完璧でなくて構いませんし、静かな部屋も要りません。向かない場面もありますから、全部を音声に置き換える必要もないでしょう。散歩のついでに、明日やることを三十秒だけ喋ってみる。始めるなら、そのくらい軽いところからで十分だと思います。


