【約21,000字】「AIで記事は書けない」と思った人へ。自分の事業に最適な記事を書くエージェントの作り方
AIに記事を書かせてみて、出てきたものを読んで静かに閉じた。そういう経験のある人に向けて書きまし…

第1章 「AIで記事は書けない」と思った人へ
AIに記事を書かせてみて、出てきたものを読んで、静かに閉じた。そういう経験のある人に向けて書いています。
文章としては整っている。誤字もない。見出しもある。なのに、読み返すと何も残らない。どこかで読んだような話が、どこかで読んだような順番で並んでいる。自分の名前で出すには薄いし、かといってどこを直せばいいのかも分からない。何度か試して、そのうち開かなくなった。
最初に言っておくと、そのとき「微妙だ」と思った感覚は正しいです。出てきたものは、実際に微妙だったはずです。AIで記事が量産できるという話を真に受けて、期待した状態で読むと、なおさらそう感じます。
諦めたことを責めるつもりはありません。ただ、諦めた対象が少しずれていた、という話をこれからします。
出てきた文章が薄い理由
AIが書いたものが薄くなるのは、能力が足りないからではありません。渡した材料が薄いからです。
テーマだけ伝えて書かせたとします。AIの手元にあるのは、そのテーマについて世の中に大量に書かれてきた文章の平均像だけです。平均から作れば、平均が出てきます。誰にでも書ける内容になるのは当然で、むしろ正しく動いています。
「AIっぽい文章」という言い方をよくしますが、正体の半分はここだと思っています。言い回しが不自然なのではなく、中身が誰のものでもない。読んで何も残らないのは、残るものを渡していないからです。
試したのは「AIに書かせること」で、まだ試していないのは「自分の持っているものを渡すこと」だった、というのが私の見立てです。
渡せるものは、思っているより多い
自分には渡せる材料なんてない、と感じるかもしれません。ただ、実際に書き出してみると出てきます。たとえば次のようなものです。
- 実際に使ってみて、良かったところと駄目だったところ
- 買う前に迷ったこと。何と何を比べて、最後に何で決めたか
- 一度失敗したこと。なぜ失敗したのか、次にどう変えたか
- お客さんから何度も聞かれることと、いつも返している答え
- 業界では当たり前だけれど、外の人には知られていないこと
どれも特別ではありません。特別ではないから価値がない、と思ってしまうのですが、逆です。平均から作れないものだけが、平均と違う文章になります。
問題は、頭の中にあるだけでは渡せないことです。頼むたびに思い出して書くのは続きません。だから貯める場所を作ります。本書の前半で作るものの1つがそれです。
続けようとすると出てくる、3つの穴
材料を渡せば1本目はよくなります。ただ、2本目、3本目と続けると別の問題が出てきます。私が何十本か書かせて分かったのは、うまくいかないときは決まって次の3つのどれかが抜けている、ということでした。
1つめは、前提が引き継がれないこと。
人に頼むときは、伝えたことがその人の中に残ります。AIには残りません。会話を閉じた瞬間に忘れます。次に頼むときは、また何も知らない状態から始まります。前回どれだけ丁寧に説明しても、その分は蒸発しています。
2つめは、品質の基準が言葉になっていないこと。
「AIっぽいのはやめてほしい」と伝えても、たいてい直りません。AIっぽさが何を指すのか、こちら側でも言葉になっていないからです。読んで違和感はある。けれど、どこがどう違和感なのかを説明できない。説明できないものは、指示にも書けません。
3つめは、調べずに書いてしまうこと。
一番やっかいでした。AIは、調べていなくても、それらしい文章を書けてしまいます。実際、私は自分のメディアで数十本を書かせたあとで、調査の工程がまったく動いていなかったことに気づきました。書かれていた内容は、検索結果を見て書いたものではなく、モデルがもともと持っている知識と、私が渡した企画メモだけで作られていました。読んでも気づけません。破綻していないからです。
調べたかどうかは、出来上がった文章を読んでも分かりません。だから、工程の側で担保するしかありません。
気をつけるのをやめる
3つの穴は、どれも「毎回気をつける」では塞がりません。人間の注意力は、本数が増えるほど落ちます。私の場合、5本目あたりから確認が雑になりました。
塞ぐ方法は、頼み方を仕組みの側に移すことです。
- 材料と前提は、毎回読まれる場所に置く。頼むたびに説明しない
- 品質の基準は、検査できる粒度まで分解して書き出す。感想ではなく項目にする
- 調査は、飛ばせない順番に組み込む。調べた結果が渡らないと執筆が始まらない形にする
言葉にすると当たり前ですが、当たり前を実際の形にするところに手間がかかります。本書で作るのは、その形です。
本書で作るもの
読み終わったときに手元に残るのは、記事ではなく、記事を作るための一式です。中身は5つあります。
- 書く目的をまとめた文書 — 事業の何につながるのかを1か所に書いたもの
- 一次情報の置き場 — 自分にしか書けないことを貯める場所
- 常に読ませる記憶 — 事業のこと、読者のこと、避けたい言葉
- 役割ごとに分けた担当 — 調べる担当、書く担当、直す担当
- 検査項目のリスト — 「AIっぽさ」を具体的な項目に分解したもの
一式ができると、記事1本にかかる自分の時間が減ります。ただ、私が本当によかったと思っているのは、時間よりも同じ指摘を2度しなくてよくなったことのほうです。1本目で気づいたことを書き足しておけば、10本目には最初から反映されています。
期待しないでほしいこと
正直に書いておきます。一式を作っても、ボタンひとつで完成原稿が出てくるようにはなりません。
私は今も、上がってきたものに手を入れています。事実の確認は自分でやりますし、体験にあたる部分は自分で書き足します。減るのは、毎回おなじことを説明する手間と、同じ指摘を繰り返す手間です。ゼロにはなりません。
それでも作る価値はある、というのが私の実感です。手を入れる場所が「毎回同じところ」から「毎回違うところ」に変わります。前者はただの消耗ですが、後者は自分にしかできない仕事です。
進め方
本書は、上から順に読んで、そのとおりに作れば一式が組み上がる形にしてあります。すでに一部を持っている人は、足りないところだけ拾ってください。
ひとつだけ先に伝えておくと、載せているものをそのまま真似しても、たぶんうまくいきません。検査項目は私の書き癖に合わせたもので、読者の書き癖とは違います。事業が違えば、渡すべき前提も変わります。
なので本書では、私が使っているものをできるだけ実物のまま載せつつ、「なぜそう決めたか」を必ず添えました。真似する対象は形ではなく、決め方のほうです。自分の事業に合わせて組み替えるための材料として読んでもらえたらと思います。
では、最初の1つから作っていきます。書く目的をまとめる話からです。
第2章 書く目的の決め方 最初に作るのは、書く目的をまとめた文書です。1枚で十分です。 順番として、いきなりAIの話から入りたくなるのですが、空のまま進めると全部が薄くなります。理