自分の声を音声クローンにしてAIナレーションを作ったら、残った仕事は「原稿を何字書くか」だった
自分の声を音声クローンにして、動画のナレーションを読ませています。声は一度で用意できましたが、か…

動画のナレーションを、自分の声で読ませています。ただ、マイクの前には座っていません。自分の声を音声クローンとして登録して、原稿を渡すと読み上げたファイルが返ってくる、という状態を作りました。声のほうは一度用意してしまえば、あとは毎回同じものが出てきます。それで制作が楽になったかというと、時間を取られる場所が動いただけでした。8分の動画には原稿が何字いるのか、を毎回計算するようになったからです。同じ声と同じ道具で2本作ったのに、1分あたりに読まれる字数は2本で違いました。
自分の声を音声クローンにして、動画のナレーションにした
作っているのは、8分から10分の解説動画です。顔は出さず、語りだけで進みます。ナレーターに頼む予算はありませんし、自分でマイクに向かうと、読み直しを含めて1本で数時間が消えます。読み上げの工程だけを渡せないかと考えて、自分の声を学習させたクローンに読ませることにしました。
既製のナレーション音声を使う手もあります。それでも自分の声にしたのは、記事と動画を1つの看板にまとめておきたかったからです。書いている文章の癖と、聞こえてくる声が別人だと、そこだけ借りてきた感じが出ます。中身が同じでも、誰の声で届くかで受け取られ方が変わる、という程度の話です。
口の動きを声に合わせるリップシンクは使っていません。絵と声は最初から別の工程で作っています。
クローンに渡したもの
渡したのは自分の声のサンプルだけです。登録した声には Suggesco Ryu という名前を付けました。以降はテキストを投げると、その声で読んだ音声ファイルが返ってきます。自分で聞いても、本人が読んだものと区別が付きません。
区別が付かないことと、そのまま使えることは別でした。出来上がりを通しで聴くと、まだ機械っぽく聞こえる箇所が残ります。
機械っぽさが出たのは、声ではなく原稿の側だった
引っかかる箇所を1つずつ聴き直すと、原因は声の質ではありませんでした。一文が長い、漢字が続く、固有名詞の読みが決まらない。人が声に出して読むときは勝手に補われる部分が、そのまま音になって出てきます。
固有名詞ははっきり出ました。ブランド名をローマ字のまま渡したら、想定していない読み方をされたまま公開してしまったことがあります。読ませたい読みがあるなら、渡す原稿の側をカナで書いておくしかありませんでした。声を作り込む話だと思っていたら、直す場所は原稿でした。
【実測】私の声のクローンは1分あたり315字で読んだ ── 1本目の数字は、あとから使えないと分かった
原稿を書き始める前に知りたいのは、8分の動画なら何字いるのか、という1点です。ここから先の数字は、私が使っている1つのサービスの、1つの声で、2本ぶんだけを測ったものです。別のサービスや別の声で同じ数字になるとは思っていません。
1本目で出した292字は、割る数を間違えていた
最初は1分あたり320字で見積もっていました。1本目の台本は2,637字だったので、8分15秒くらいに収まるつもりでいました。返ってきた音声は9分01秒、秒数にして541.2秒。2,637を9分01秒で割って、1分あたり約292字だと記録しました。見込みより45秒ほどはみ出した計算になります。
この292を、しばらく次の原稿の見積りに使っていました。ところがこの数字は、実際には読まれていない文字まで数えて割っていました。
1回の生成で作れる音声には上限があります。9分前後で、文の途中でも黙って切られます。エラーも警告も出ません。あとで書き起こして数えたら、1本目は最後の2文、117字が音声に入っていませんでした。つまり9分01秒のあいだに読まれたのは、2,637字のうち約2,520字でした。割り直すと1分あたり約279字になります。
投げた字数で割るか、読まれた字数で割るか。それだけで13字ぶん変わります。私は投げたほうの数字で割って、そのまま次の見積りに使っていました。
いま使っているのは、2本目で出した315字のほう
2本目からは台本を8分ぶんずつに割って生成し、あとで繋いでいます。切られなくなったので、投げた字数と読まれた字数が一致します。その状態で測り直したのが1分あたり約315字で、8分なら約2,500字、9分なら約2,850字です。書く前にこの字数を決めておくと、書き終わってから削る作業が丸ごと消えます。
速くなったのは、測り方だけが理由ではない
2本目の台本は2,631字で、1本目とほぼ同じ長さです。返ってきた音声は8分21.7秒、501.7秒でした。字数が6字しか違わないのに、40秒近く短くなっています。
切られなくなったぶんもありますが、それだけではありません。1本目を聴いたときに「落ち着きすぎている」という感想が出たので、2本目は少し速く読ませています。つまり同じ声で同じ道具でも、読ませ方を変えれば1分あたりの字数は動きます。
315も、このサービスの速度ではありません。設定と原稿の書き方で動く数字です。どこかで拾った数字を持ってくるより、自分の声で1本測ってしまったほうが早いと思います。ただし測るときは、投げた字数ではなく読まれた字数で割ってください。私はそこで一度間違えました。
台本どおりに読まれたかを、耳ではなく機械で確かめた
読み上げを渡したあとに残るのは、渡したとおりに読まれたかを確かめる仕事です。9分の音声を、台本を見ながら耳で照合するのは無理でした。集中が保たないうえに、抜けた1文が「たぶん読まれた気がする」で通ってしまいます。
生成した音声をWhisperで書き起こして、台本と突き合わせる
やり方は素っ気ないものです。返ってきた音声をローカルのWhisperで書き起こし、その書き起こしと台本の字数を突き合わせます。人の耳を使わずに、欠けた割合が数字で出ます。
音声の生成に上限があると分かってからは、この照合を毎回入れています。切られていても無音にはならず、それらしいところで終わっているだけなので、聴いただけでは気づけません。
欠損は1.8%と、マイナス0.5%だった
2本目は台本を2つに割って生成したので、数字も2つ出ています。前半の欠損が1.8%、後半がマイナス0.5%でした。私が許容ラインに置いているのは3%未満なので、どちらも通しています。
マイナスは、書き起こしのほうが台本より字数が多かった、という意味です。読まれた内容が増えたのではなく、書き起こす側が言い直しや句読点を拾って字数を膨らませています。プラスもマイナスも出るので、絶対値で見るようにしています。
3%という線に、はっきりした根拠はありません。1文が丸ごと落ちればこのくらいの割合には届くだろう、という見当で置いた数字です。もっと厳しくしてもいいのですが、書き起こしの側にも誤差があるので、あまり細かくすると毎回引っかかって作業が進まなくなります。
照合を挟むようになって変わったのは、聴き直す範囲です。数字が先に出るので、通しで聴かずに、引っかかった箇所だけを開けば済みます。検品そのものは残りますが、耳を数字に持ち替えただけで、かかる時間はかなり縮みました。
【実測】ナレーションで減ったのは8.25クレジット ── 見積りは9.9だった
お金の話も1つだけ書いておきます。ここに出す8.25クレジットは、1本目のナレーション音声だけの実費です。動画1本を仕上げるまでの総額ではありません。
生成の前に取った見積りは9.9クレジットでした。実際に生成して残高を見たら、減っていたのは8.25クレジットです。差は1.65クレジット、見積りより2割弱安く済んだことになります。
改行の空行は課金されていないように見える
差がどこから来たのかを考えると、思い当たるのは台本の空行です。台本は演出のメモを挟むので、章と章のあいだに空行がかなり入っています。見積りがテキスト全体の文字数から出ていて、実費が読み上げに使われた文字だけで計算されているとすれば、数字は噛み合います。
ただし、課金の仕様にそう書かれているのを確認したわけではありません。1本ぶんの見積りと実費を見比べて、そう見えている、というだけです。原稿を詰めれば安くなる、と読み替えるところまでは行かないほうがよさそうです。
総額のほうは、別の記事に分けました
静止画と動画を含めた1本ぶんの明細は、動画1本を作って残高がいくら減ったかを数えた記事に表のまま並べてあります。そちらで「9分のナレーションは9クレジット」と書いているのは、この記事とは別の回の実費です。回ごとに字数が違うので、同じ9分でも数字は動きます。ナレーション以外がどこに乗っているかは、あちらの内訳表を見るのが早いです。
声が用意できてから、書き始める前に字数を数えるようになった
読み上げという工程そのものが、私の手元から消えました。声を録る時間も、読み直す時間も、いまはかかっていません。原稿を投げれば、自分の声のファイルが数分で返ってきます。
制作全体が軽くなったかというと、そうはなりませんでした。声は一度で用意できたのに、原稿はいまも自分で書いています。しかも、書き始める前に「8分だから約2,500字」と決める作業が新しく増えました。渡す前は、書きたいだけ書いて、長ければ後で切ればいい、で済んでいたところです。
渡したのは読み上げという後ろの工程なのに、増えたのは書き始める前の作業でした。何分の動画にするのか、何字で書くのか、読まれたとおりかを何%まで許すのか。この3つが決まっていないと、原稿を投げるところまで進めません。
楽になった実感は、たしかにあります。ただ、浮いた時間がまるごと空くわけでもありませんでした。字数を決める、速度を測る、書き起こして突き合わせる。工程が1つ消えたというより、消えた工程の前と後ろに小さい作業が生えた、という言い方が近いです。
生えたほうの作業が楽しいかというと、これは人によると思います。私は原稿を書くのが嫌いではないので、読み上げだけ渡せた状態はちょうどよく感じています。逆に、書くのが苦手で声を出すのが得意な人には、渡す工程が反対になるはずです。どこを渡すと自分の手元がどう変わるのかは、1本作ってみないと分かりませんでした。
喋って入力する側、つまり自分の声を文字に変える話は音声入力とAIを組み合わせて歩きながらメモを取る記事に分けてあります。入り口と出口で使う道具が別なので、読む順番はどちらからでも構いません。
よくある質問
Q. 自分の声でAIナレーションをするには、どうすればいいですか?
A. 音声クローンに対応したサービスに自分の声のサンプルを登録して、テキストを渡す、という流れになります。私の場合は登録した声に名前を付けておいて、以降はテキストを投げるだけで同じ声が返ってくる状態にしました。難しいのは声を作る工程よりも、渡す原稿でした。読ませたい読みがある固有名詞は、原稿の側をカナで書いておかないと想定外の読みで出てきます。
Q. 自然なナレーションをAIで作るには、何を直せばいいですか?
A. 私が直したのは、声の設定より原稿でした。一文を短く切る、漢字が続く箇所をひらく、固有名詞をカナにする。3つ直すだけで、機械っぽく聞こえる箇所がかなり減ります。もう1つ、速度は聴き手の印象に直結します。1本目は落ち着きすぎているという感想が出たので、2本目は少し速くしました。同じ長さの原稿で40秒近く変わるので、印象もはっきり違います。
Q. AIナレーションは商用利用できますか?
A. 使うサービスと、声の作り方(既製の声か、自分の声のクローンか)で条件が変わります。私はこの記事のために各社の規約を読み比べていないので、断定しません。利用するサービスの規約を、取得日を控えたうえでご自身で確認してください。Higgsfieldについては、利用規約を原文で読んだうえで書いたHiggsfieldとは何かをまとめた記事があります。商用利用の節に、規約のどこにどう書かれていたかを取得日つきで残してあります。
Q. 無料のツールでも、同じことができますか?
A. 私が使っているのは有料のサービスなので、無料ツールとの比較はできません。ただ、この記事に書いた作業のうち、費用がかかるのは音声の生成だけです。読み上げ速度を測って字数に割り戻すことも、書き起こして台本と突き合わせることも、無料の道具でできます。どのサービスを選んでも、1本目で自分の速度を測っておく価値は変わらないと思います。
まとめ
自分の声を音声クローンにして、動画のナレーションを読ませています。声そのものは一度で用意できて、読み直しの時間もなくなりました。かわりに増えたのが、原稿を何字書くかを先に決める作業です。
いま使っている読み上げの速度は、1分あたり約315字です。8分の動画なら約2,500字。見積りに使っていた320字は速すぎました。1本目に出した292という数字は、音声が途中で切られていたことに気づかず、投げた字数のほうで割っていたものです。持ち帰っていただきたいのは315という数字そのものより、自分の声で1本測るまでは字数が決まらない。しかも測るときは、投げた字数ではなく読まれた字数で割る、という点です。
台本どおりに読まれたかは、耳で聴かずに書き起こしで確かめています。2本目の欠損は1.8%とマイナス0.5%で、私は3%未満を通しています。1本目のナレーションの実費は、見積り9.9クレジットに対して8.25クレジットでした。差の理由は台本の空行だと考えていますが、仕様として確認は取れていません。
更新履歴
2026年9月:初版を公開しました。読み上げ速度・欠損率・クレジットの数値は、2026年8月に制作した動画2本の実測です(クレジットの8.25と見積り9.9は1本目ぶん、欠損率は2本目ぶん)。1本目は2,637字を投げて9分01秒でしたが、末尾117字が音声に入っていなかったため、当時記録した約292字/分は投げた字数で割った数字でした。2本目は台本を割って生成し、2,631字で8分21.7秒(約315字/分)。この記事では、切られていない2本目の315字/分を採用しています。2本ぶんの観測なので、サービス全体の速度としては扱えません。料金と課金の条件は変わりやすいので、金額の判断は利用するサービスの最新表示をあわせてご確認ください。
派遣監査人
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